我が家はさいきん朝、バターパンで始まる。
食パンにバターを塗っただけのいかにもシンプルなものなのに、子供たち、とくにハナの心をつかんで離さない。
ハナの食べ方は、お気に入りの中のやわらかい部分から食べ耳を残す。長男ココは、最初に端の耳を全部食べてから、柔らかい中身の方を食べる。
遅く食べると兄に取られてしまうということが肌身で学んであるので、最初に中を食べてしまうようになった。そして耳を残す。合理的だ。
残すな!とココがキレる。長男長女に見受けられガチなお気に入りを後でのパターンと、上に兄姉いる人は、最初に好きなもの食べるパターン。兄妹で違うので、微笑ましい。
しかし、ハナが自分が食べ残した耳を弟にあげていた習性により、ピピに関しては、可哀想に耳しか食べなくなった。
「あたしが中食べるから、あんたはこれを食べて」と耳を渡されるのをじっと傍で待っつピピ。
自分が食べるのは、耳だと思っている。可哀想だが、残飯が残らない合理的な朝に、母は内心、森に共存しあう動植物のように、安心感と調和を感じている。
が、ある時、バターが切れていることがあった。ハナは怒って、デッテに「今すぐ買ってきて!」と怒鳴った。朝八時。
デッテ「今日昼買ってくるから明日食べよう」となだめると、「今すぐバター買ってこなかったら、もうあんたパパじゃないよ」と脅した。
殺傷力ある4歳女児に一瞬ひるんだデッテが「パパじゃないなら何になるの?」と聞いた。
ああ、怖いもの見たさ。その扉開けないほうがいいのに。
いずれにせよ、機嫌悪いときのハナにたてつこうなんて、デッテ助からない予感しかしない。
ハナは、ゆっくり間を置いた後、デッテにメンチきりながら、そんなこと言わせるなという静けさで、
「知らねえ」と放った。
バターごときでざく切りにされたデッテを直視できず、季節は夏なのに、我が家には朝から木枯らしが吹いていた。
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