子育て爆笑エッセイ『あだ名はココです』　～やさしい鬼～

三番目ピピが生まれたばかりの頃のこと。

ココは、いつも私をフォローしてくれる。

「ナナの料理美味しい」
「世界一優しいお母さんだ」
「ナナは子供を三人も産んだ女神だね」

よく褒めてくれるナナ親衛隊隊長。

母大好き息子に育ってよかったなと心底思う。

私のモチベーションの8割は、こうしたココの発言に支えられている。
しかし、いつもこの発言どおりに優しいお母さんというわけがない。

家事、育児の間でストレスが爆発し

「ここに、洗濯物おかないで！」
「ちゃんと最後までかたづけて」
「おもちゃ出しっぱなし！捨てるよ！」
と日々のたまった怒りが、時々家中に炎のようにバラまかれることがある。

まるで、東京を焼き尽くすゴジラ。

そんな時、ココはシュンとなって片付けだし、デッテは目もあわせぬ生物となり、触らぬ神から静かに気配を消し遠ざかっていく。

その日も焼き討ちのあったデッテが

「あんまり怒るなよ。俺たちも悪いけど、ナナはいつもイライラして怒る沸点が低いからこっちも大変」

的なことを言いだした。

何を～？！確かに、私の沸点は低いかもしれないけれど、２４でファミレスばりにピピの面倒をみてるわけよ。自分の自由な時間もあって元気に何でもバリバリって訳にもいかんこの状況を慮って、そこはおんどれらがもっと働けよ！と反撃しそうになったら、すかさずココが

「デッテ、そんな風にナナのこと言うなよ。
ナナは、ピピの面倒で大変なんだから、ナナの気持ち分かってあげないと」

と私を庇ってくれた。なんて感動。確かにちょっと怒りすぎちゃったけど、やっぱり一番母のことを理解してくれるのはココだけだと想ってると、

「確かに、ナナはちょっとだけ怒りすぎることもあるけど」

と、もじもじ。

あんまり怒らないでと言うと、私を傷つけると思ったであろうココが苦渋の末、フォローしたのが

「ナナが怒るのは、仕方ないんだよ！やさしい鬼の生きのこりだから！」

と、すんごい底辺の底辺の砂を、微妙な角度ですくいあげた。

優しいけど、鬼。しかも生き残りって。

そのフォローまさに神業。

ちなみにハナは、親衛隊ではなく日々私と堂々と張り合う敵陣の座にいる。